中学時代に鼠径ヘルニアで入院した時の看護師さん

生まれた頃から悩まされていた鼠径(そけい)ヘルニア。
中学2年になったある日、なんの前触れもなく突然母親に病院に連れて行かれた。(後日妹に聞いた話では、その前日いつものように痛がっていた私をいい加減見かねたらしい)
当然簡単とはいえ手術が必要なので、恐怖もあったが「ようやくこの痛みから開放される!」という喜びからか緊張ではや打つ胸とは反対に、意外と頭は冷静だったため当時のことは今でもよく覚えている。
まず、入院初日は腸を空にするため食事は一切なし、点滴のみにして過ごし、トドメに浣腸というスケジュールだった。
病室に収まって入院着に着替えた後、すぐに看護師さんがやってきて早速左手首に点滴をしようとするのだが、これがなかなか入らない。「血管が細くてなかなか入らないね~」…実際点滴の針は注射で見慣れたそれと違いかなり太く、十何回も刺しては抜いてを繰り返されたのだがやっぱり入らない。というかこんなに針刺すのが下手な看護師さんがいるのか!?不安になった私は
「あの、他の看護師さんに変わってもらえませ「右手だったら入るかも!」
渋々右手を出すと、こっちは2,3の試行回数で収まったからいいもの、何故か点滴が刺さっていない手首にまでガーゼを貼られて終了。
(あの、刺さった方も針の違和感がものすごいんですけど、大丈夫なんですかね…)
すっかり先ほどの若い看護師さんに(失礼ながら)不安を感じてしまった私は、些細な違和感にも恐怖を感じてしまうほどになってしまっていた。
そして次は浣腸をされたのだが、こちらはごくごく手慣れた様子で、「浣腸」というプログラムとしてはなんの問題もなく済んだのだが、それが人生初だった私にとっては地獄のような時間だった。一回目の浣腸を耐え切れずすぐに出しきってしまい、看護師さんに「30秒我慢して!」と怒られもう一回、しかし耐え切ったにも関わらず出てきた量が少ない、さては腸にまだ残っているかもということでもう一回…結局2回目で全部出しきっていたのだが、3度も尻を割られ突っ込まれ、それを寸分の狂いもなく一瞬で終わらせる看護師さんの腕にはまさに歴戦の何かを感じさせる物があったと記憶している。
次の看護師さんもそうだが、彼らはよく世間に例えられるような天使というよりも、戦場の古強者のような貫禄を漂わせていると言ったほうが近いと思う。
そして最後、夕方に看護師さんがカミソリを手にやってきて言うには、「手術で切る部分の近くの毛を剃る」必要があるとのこと。
しかし当然中学2年、思春期である。同性同士であっても、たとえ家族であったとしても下腹部なんて見せたくない!
だが看護師さんはそれが若者だろうが老人だろうが同性だろうが異性だろうが構ってられないし、仕事なのだから容赦はしない。
こちらが慌てふためく様子など無視で
バッと入院着に手をかけ
「剃るほどないね」
ポツッとつぶやき、すぐに手を話すと病室から出て行った。
隣に胃がんで入院しているおばさんが笑いをこらえている。
現在27歳になったが、今でもそこまでは毛は生えてこない。

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